前回の続き
伯母が呼んだ霊能者の先生に、私に 猫が憑いている と言われ、先生の言われた通りに供養を行った私達一家。
元々何も感じていなかったので、何かが改善された実感も無く、そしてその事について誰も話す事も無く、いつも通りの日々を過ごし、月日は流れて行きました。
1~2年経った頃でしょうか、両親と同じ部屋で寝ていた私は、ある日から姉と同じ部屋で寝る事になりました。
姉は「おやすみ」と言ったら1分もかからず眠る事が出来る人ですが、元々怖がりだった私は、寝付けない事が多くなりました。
豆電球をつけていないと怖くて眠れません。
何か、居そうな気がしてしまうのです。
実際、妙なモノがほぼ毎日見えていました。
怖いと言う心理と、薄暗い部屋がそういう幻覚を見せていたのだと思うのですが・・・
天井、特にドア付近から廊下にかけて、白いモヤの様なモノが絶えず流れて行くのが見えるのです。
いつもこれは何だろうと思いながら見ていました。
(怖いと感じる時と、そうでもない時があります。)
ある晩、私が一人で部屋でベッドに入っていると、いつも以上に恐怖心に囚われて寝付けない晩がありました。
早く寝なきゃ早く寝なきゃ・・・
そう思いながら、目を瞑ったり開いたりを繰り返していました。
姉はなかなか寝室にやってきません。
気のせい気のせい・・・。
心の中で「おばけなんてないさ」などを歌いながら、何とか気を紛らわせようとしました。
しかし
コッ・・!
足元で突然音が鳴りました。
コッ・・!
金属音よりは柔らかい、かと言って木よりも硬そうな、不思議な音です。
ハッキリと聴こえます。
正体不明の音に私は怯えました。
更に
コココココココッ!
音が私のベットの周りを足元から頭の上までグルグルと回り出したのです。
怖い怖い怖い怖い!!!
今にもベッドの下から何かが出て来るんじゃ無いかと思い怯えました。
怖くて動けません。
コココッ・・・!
何周した頃でしょうか、音は止みました。
私はベッドから抜け出し、両親と姉のいる居間に駆けました。
しかし、誰も真剣には取り合ってはくれませんでした。
両親は「へー。何だろうね。」と言ったそっけない感じ。姉には笑われました。夢でも見てたんだろうと思われたみたいです。
バカにされた様でモヤモヤしたまま、丁度ねる時間だった姉と一緒に寝室に戻りました。
ベッドに入りながら姉と少し話しをしていたら恐怖心は薄れ、その後はぐっすりと朝まで眠る事ができました。
それから数年、白いモヤは相変わらず見える事がありましたが、見えない事が圧倒的に多くなり、あの不思議な音もあの時のみの出来事で、聞く事はありませんでした。
私は中学生になっていました。
気になる事が無い訳ではありません。
家鳴りが凄いんです。
頻繁にピシパシと音が鳴るので訪問客は皆驚きました。
そして、2階のトイレの扉だけ、勝手に開いたり、バタン!と音を立てて閉まったりが酷いんです。何度しっかり閉めても勝手に開いてしまいます。
これらはこの建物の問題だと思い、誰も気にしてしませんでした。
どちらかと言うと「ラップ現象みたい!心霊現象みたい!」と面白がっていました。
あの怖がりの私までもです。何故でしょう?
それは心霊ブームの反動なのか、今度は「怪奇現象を科学で解明」ブームが起こっていたのです。
そう、大槻教授の出現です。
怖がりの私にとって大槻教授等の存在がどれだけ支えになった事か。
一つ小学生の頃に遡りますが・・・
家には大きな鏡がありました。
800㎜×1000㎜程、枠も無く、鏡単体です。
母がどこからか貰って来たようで、それは暫く子供部屋の壁に立てかけられていました。
ある日私はそこの前で一人黙々とジグソーパズルで遊んでいました。
すると・・・
ガタッ
ガタガタガタガタガタガタガタガタッ!
突然鏡だけが揺れて壁を小刻みに叩きつけたのです。
不思議と恐怖心は無く、「何だ・・・?」と思い、鏡に触れようとした時、揺れは収まりました。
暫くあれは何だったのかとモヤモヤしていましたが、これを大槻教授はテレビで解説してくれたのです。
共振という現象があり、遠く離れた、例えば工事などの揺れが、遠く離れた場所にピンポイントで伝わってしまうというものです。
この現象を使えば、理科準備室の人骨模型の、あご骨だけをカタカタ揺らすといった事も可能だそうです。
なので、この鏡の不思議な揺れも、共振によるものだろうと分かりました。
この事で、非常にスッキリした私は、不思議な現象の原因は、ほぼ科学で解明出来るんだと思う様にしました。
しかし、どうしても科学や偶然などで片付けられない出来事が起きてしまったのです。
ある日の晩、いつもの様に寝ようとしましたが、なかなか寝付けませんでした。
落ち着かない気分で長い事、寝がえりを打ったり、目を開けたり閉じたりを繰り返し、眠気が来るのを待っていました。
しかし、落ち着かない気分は増すばかりで、次第に何とも嫌ぁな気分になってきました。
いや、嫌な気分と言うより「とにかく嫌な気配」がしてならなかったのです。
元来の怖がりがそう思わせてるのかも知れない、気のせいだろう、そう思いながらも、私は心の中で、その「嫌な気配」に向かって語りかけました。
「悪いんだけど、私じゃ全然分からないし何も出来ないんだ。向こうの人達(向かいの寝室の両親)に言って貰えるかな?」
そう言った暫く後、漸く気分も落ち着き、眠る事が出来ました。
・・・そして翌朝。
私の後に起きてきた母が、非常に眠たそうにリビングに入って来てこう言ったのです。
「いやぁ夢にうなされて酷かったわぁ。お腹の上で猫がニャーニャーニャーニャーうるさくって重くって!ホント参った・・・。」
?!?!?!
私「え?夢・・なの?」
母「うん、夢。やー、身体しんどいわぁ。」
私「へ、へぇー・・・・・。」
偶然にしても、あまりにもタイミングが良過ぎて驚きました。
そして、母とその猫にも申し訳ない気持ちになりました。
母は無自覚ですが、我が家で一番霊感が強いのかも知れません。
猫も、私に言われて素直に母に訴えに行ったのにも関わらず「夢」と片付けられて何もして貰えないままです。
その猫は、その後2~3度母に同じ様に訴えた様でした。
勿論全て「夢」で片付けられてお終いです。
この猫は、あの猫なのでしょうか?
お祓いは失敗してしまったのでしょうか?
全ては謎のままです。
私には見えない猫、
まだ少し続きます。