夏なのでチョイ ホラー な話を。
30年以上前、まだ私が小学生の頃ですが、 霊能者 ブームというものがありました。
連日の様にテレビで霊能者を見るという、何とも不思議な時期でした。
「あなたの知らない世界」で有名な、新倉イワオさんが冝保愛子さんを世に出した事から火が付いた様です。
新倉イワオさんはテレビ創成期から業界携わる方で、放送作家であり、心霊研究家でもあり、心霊パイオニアとして名高い方です。
正に知らない世界を私達に次々に紹介し、子供達だけで無く大人達も恐怖に陥れ、同時に好奇心をも大きく掻き立ててくれました。
流行りものが好きな私の伯母もそんな一人であり、ある日、「家に霊能者の先生を呼んだからおいで」と、電話で私達一家を呼びたてました。
何だか面白そう!きっと、一家全員がそう思っていたに違いありません。
伯母の家には、お坊さんの様な着物に、簡易的な袈裟を掛けた女性がおりました。
髪はショートで、30代半ば~後半辺りに見えました。
子供の頃の記憶なので、もしかしたらもっとお若かったかも知れません。
挨拶と極簡単なお互いの紹介を済ませ、
「では、早速・・。」
と我々一家を、父から年齢順に視て貰う事になりました。
我が家は、父、母、姉、私の4人家族。よって、私は一番最後になります。
視る方法は、先生に背を向けて座り、先生がお経の様なものを唱えながら、背に2本指で大きく文字を書く様になぞっていくというものでした。
父、母、姉、と「特に何も問題ありませんね。」と終わり、いよいよ私に番となりました。
背を指でなぞられるというのは物凄くくすぐったく、必死に耐えていました。
すると、
先生の指が私の肩の所でピタリと止まりました。
暫く静止した後、両親に向かい、こう言いました。
「猫、飼っていませんでしたか?」
戸惑う私達家族。
私が喘息持ちで猫アレルギーもあった為、我が家では猫を飼った事がありません。
両親は「あの子か?」「いやまさか。それは無いよ。」「じゃあ、まさかお隣りさんのあの子?」「それこそ無いって」と何やら話をしています。
両親は姉が生まれる前、ほんの一時期猫を飼っていた事があるそうです。
自分から逃げたと聞いています。
「お隣さんのあの子」とは昔住んでた家の隣りの家で飼っていた猫で、私達姉妹はよく遊びに行っていました。(不思議とその家では発作は出なかった・・・と思う)
先生が
「道で亡くなっている子を見て“可哀そう”と思うだけでも“あ、この優しい人に付いてっちゃおう”と連れて来ちゃう場合もあります。」
と言うので、きっとそれだろうという事に落ち着きました。
同時に、何も出来ないなら同情しない方が良いと教わりました。
先生がその場でお祓いしてくれると思っていたのですが、強引なやり方をするよりも、ソフトなやり方で送り出す方が良いとの事で、その方法を教わりました。
その方法とは、
・三つ又の道路を探す。矢印の様に、直角の真ん中に、もう一本道がある形が好ましい。
・その頂点に猫まんま(ご飯の上にカツオ節)を置く。
・猫まんまにお線香を差し、成仏出来る様にお祈りをする。
・お祈りが終わったら立ち去り、決して後ろを振り向かない。
以上です。
時刻の指定もあった気がしますが忘れました。
行ったのは夜だったには間違いないです。
その他に、多分その猫さんとは関係無いと思うのですが、もう一つ加えられました。
・1か月間(多分)毎朝、家の敷地の四つ角に塩を置く事。
これは母が行う事になりました。
以上を教わり、後は雑談タイム。
覚えているのは、「どうして霊能者になろうと思ったのですか?」との質問に対し、「だって、こういう着物着てさ、何だかカッコいいじゃない!」と言っていた事だけです。
憧れたからと言ってなれるモノでは無いと思っていたので、凄く意外に感じたのを覚えています。
さて、その日の内か翌日かは定かではありませんが、早速私に憑いていると言われている猫さんとのお別れの儀式を行う事になりました。
我が家には住宅地図が何故かあったので、それを見ながら三つ又の道を探しました。
これが珍しい道で、凄く難しい。
微妙な感じがしつつも、まあこれで大丈夫かな?という所が見付かり、猫まんまとお線香を持って、一家揃って夜のドライブへ。
憑いていると言われても実感は無いので、怖いという感覚はこの時は全く無く、クエストにチャレンジしている気持ちでワクワクしていました。
30分も掛からない距離だったと思います。現場へ到着しました。
人通りも無く、そして暗い、凄く静かな住宅街の片隅です。
三つ又の頂点と思われる箇所に猫まんまを作りました。
(今思えば生ごみを捨てに来た迷惑な人でしかありません。ごめんなさい。)
お線香を立て、家族皆で手を合わせ祈りました。
さようなら、成仏してね・・・。そう祈ったと思います。
そして、「さ、行こうか。もう見ちゃダメ。振り向かない様にね。」と言われ、車に戻りました。
猫さんがご飯に夢中になっている内に置いて行っちゃう様な気がして、複雑な気持ちになりました。
車に乗って去る時が一番緊張しました。うっかりルームミラーを見ない様に、真っ直ぐ前をひたすら見つめました。
ちゃんと、お別れが出来る様に、猫さんが天国へ行ける様に・・・。
しかし、この時本当にお別れが出来たのでしょうか?
多分、出来ていなかった様な気がします。
続きます。
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